2017.12.
2018.11.14追記

食後の歯磨きについて


食後すぐに歯を磨くのは良いか否か。
あなたはどう思いますか。

二つのちょっと相反する記事を紹介します。
一つは「食後の歯磨きはダメ」。
もう一つは、通常の食事のときは食後早めに歯磨きをすること。ただし幼児や学童が対象で、成人に対しては???

***最初に「食後の歯磨きはダメ」の記事から
11月13日に野村證券セミナーに行ってきました。
このとき、配布されたロート製薬発行のfufufu vol.34に「口臭予防に必要なこと」が掲載されていました。
食後の歯磨きはむしろダメ とのサブタイトルに興味を持ちました。

冒頭に、在日欧米人の約70%が「日本人の口臭は不快」と思っているデータが公開されていました。これにはびっくりしました。(出典は、「オーラルプロテクトコンソーシアム」の調査データ)
この原因は、日本人の歯磨きを行うタイミングに問題があると指摘しています。
すなわち、食後の歯磨きは間違いと言ってます。
正しい歯磨きするタイミングは、朝、飲食をする前、起きてすぐ行うべきだそうです。
食後は、唾液の力で歯を修復する時間だそうで、最低でも食後30分は歯磨きをしてはいけないと言ってます。

詳しくは、fufufuのホームページにおける特集記事を参照ください。


***さて、もう一つの記事は
公益社団法人 日本小児歯科学会がこの問題に回答しています。
全文を以下に示します。

これまで保育所・幼稚園、学校では昼食後にはなるべく早く歯みがきをしてから遊びましょうと指導してきています。その理由としては、むし歯をつくる細菌が多量に含まれる歯垢(プラーク)と食後口の中に残留する糖質を早く取り除くためだからです。

ところが、最近になって、食後すぐに歯をみがくと、あたかも歯が溶けてしまうというような報道が新聞やテレビで伝えられたため、現場がやや混乱しているようです。

これらの報道のもととなったのは、実験的に酸性炭酸飲料に歯の象牙質の試験片を90秒間浸した後、口の中にもどしてその後の歯みがき開始時間の違いによる酸の浸透を調べた論文で、むし歯とは異なる「酸蝕症」の実験による見解なのです。

実際の人の口の中では、歯の表面は上記の実験で用いられた象牙質ではなく酸に対する抵抗性がより高いエナメル質によって被われています。したがって、このような酸性飲料を飲んだとしても、エナメル質への酸の浸透は象牙質よりずっと少なく、さらに唾液が潤っている歯の表面は酸を中和する働きがあり、酸性飲料の頻繁な摂取がないかぎり、すぐには歯が溶けないように防御機能が働いています。つまり、一般的な食事ではこのような酸蝕症は起こりにくいと考えられます。

小児における歯みがきの目的は歯垢の除去、すなわち酸を産生する細菌を取り除くとともにその原料となる糖質を取り除くことです。歯みがきをしないままでいると、歯垢中の細菌によって糖質が分解され酸が産生されて、歯が溶けだす脱灰が始まります。このように、歯垢中の細菌がつくる酸が歯を脱灰してできるむし歯と、酸性の飲食物が直接歯を溶かす酸蝕症とは成り立ちが違うものなのです。

結論としては、通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。

学会としても今後より詳細な情報を提供していく予定ですが、現在のところ、園・学校における昼食後の歯みがきについては、現状通りの方法で問題ありません。

 成人の歯磨きについては言及されていません。

公益社団法人 日本小児歯科学会

では、食後どのタイミングで歯を磨けばいいの?

fufufuホームページに歯磨きにまつわる疑問Q&Aが載っていましたので参考までに示します。
歯のエナメル質は、酸性の食物(糖分、フルーツ、酒類、酢など)によって口の中が酸性になると一時的に柔らかくもろい状態になります。この状態は、だ液に含まれるミネラル成分によって約30分で再石灰化されますが、それまでに硬いものでこするとエナメル質を傷付ける恐れがあります。
きちんと歯磨きが習慣となっている人は、歯そのものを守ることを優先して食後30分経ってから歯磨きするほうがいいでしょう。
ただし、歯磨きの習慣が十分でない子どもや、歯周病があるなど口中に細菌がたくさんいる状態の人は、まずは毎食後すぐの歯磨き習慣を付けることから始めましょう。

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