シンポジウム

〇〇年4月30日(日)、和歌山市民会館において、「シンポジウムニッポンノケシキ」と題してシンポジウムが開催されました。

プログラム

12:30〜開会の挨拶 阪南和歌山地区連絡協議会 運営委員長 湯浅 泰雲
12:35〜嵯峨御流華道総司所挨拶 理事長 坂口 博翁
12:45〜「地球に優しい暮らし方」 特別講演 イーデス・ハンソン
13:50〜「景色いけ七貫の意義と日本の自然」 基調講演 京都嵯峨芸術大学教授 真板 昭夫
真板先生の講話は、講演時間をかなりオーバーしてまでもいけばな嵯峨御流『日本をいける』プロジェクト発足過程について熱演された。
14:45〜デモンストレーション ・丹宵に見る橋杭岩・熊野那智の滝・岸和田城堀端の桜

デモンストレーション

15:30〜テキスト解説と総括 嵯峨御流 前華務長 岡田 惰克
16:00〜閉会の挨拶 阪南和歌山地区連絡協議会運営副委員長 南京八重甫

表紙へもどる
 

シンポジウム「ニッポンノケシキ」

 日本列島は北から南へと長く続き、顕著な気候は北海道ではエゾマツ、トドマツなどの常緑針葉樹林(亜寒帯林)、東北ではブナ、ミズナラ、カエデ類などからなる落葉広葉樹林(冷温帯林)、関東から九州にかけてはタブノキ、シイなどの常緑広葉樹林(暖温帯林)、そして南西諸島や沖縄にはアコウやガジュマル、マングローブ林などが森をつくる亜熱帯性常緑広葉樹林(亜熱帯林)、それぞれが変化を見せる豊かな自然の国です。森はこの列島の七割を占め、そこに蓄えられた豊潤な水は国土を潤し生命を育んできました。そこでは人もまた大自然の営みの一部として自然の恵みを享受しつつ、しかも自然を壊すことなく何千年も暮らしてきました。この国の人々が自然を「カミ」と敬うのも、自然の営みへの「畏れ」と「敬い」が脳裏に深く刻まれているからに違いありません。中でも生命を育む水は特に大切にされ、このことは日本の風景を美しく保つことにもつながりました。今こそ、この景観を守ってきた先人の叡智に気付くことが大切ではないでしょうか。近代化の名の下に開発によって壊されていく自然環境の中で、原風景を残すことは大変難しいことです。しかし「景色いけ」の原点とされる「庭潮之景」、その原風景である大沢池は1200年の時を経て、今なおその姿を留めています。当流の精神的原点であり歴史的遺産である大沢池が、憩いの場や潅漑用水など人々の生活の一部分として守られてきました。この様な例は他に類を見ないことです。
 この大沢池をはじめ、全国各地の素晴らしい景色を百年後、千年後にまで残そうと、当プロジェクトの一環として、シンポジウム「ニッポンノケシキ」をそれぞれの地域で開催し、当流門人はもとより、この地球上の自然を愛する多くの人たちにも、当プロジェクトの趣旨にご理解とご賛同を得たいと願っております。
 世界でも稀にみる多様な自然形態を持つ日本は、各地にさまざまな景色を有している「美の国」です。北海道から沖縄まで、それぞれの地域にある景色や景観をいけ表し、皆さまがお住まいの地域の「七景」と、その地域を象徴する「三勝の景色」をいけばなで表現し、暮らしの中で「景色いけ」を楽しみながら、自然との共生感を高めてまいりたいと存じております。

主催者パンフより抜粋

 

いけばな嵯峨御流『日本をいける』プロジェクト

 大覚寺を総司所とするいけばな嵯峨御流は、独自の精神と理論によって支えられています。平安の初め、嵯峨天皇は大沢池にある菊ケ島に咲く菊を手折られて瓶に挿されたところ、その花の姿が自然に天地人の三才の美しさを備えていたことに感謝され「後生花を生くるものは宜しく之を以て範とすべし」と仰せになり、これが嵯峨御流の始まりと伝えられています。
 この嵯峨天皇の御心に基づき、秋菊薫り立つ大沢池をいけばなで表現したのが「庭湖之景」です。この「庭湖之景」をはじめ、桜花に包まれた嵐山の渓谷美を表現した「嵐峡之景」、高雄の紅葉照り輝く姿をいけあげた「高尾の景」。これらを「三勝の景色」といいます。また、「深山の取方」「森林の取方」「野辺の取方」「池水の取方」「沼沢の取方」「河川の取方」「海浜の取方」と、生命の根源である水を捉え、その流れに沿った姿を表現し、自然の織り成す景観をいけ表したものを「七景」といいます。
 この「三勝の景色」と「七景」は、水の循環によって形成される生態系、すなわち深山に発生した水は森林を育て、野辺を潤し、池水や沼沢に蓄えられて新しい生命を誕生させ、河川を流れて大海に注ぐ、その折々の姿を系統的に捉えたものといえます。そして大海に注がれた水は雲となり、雨となってまた深山の源流に戻ります。これら水を軸とする景観の連続で、生態系の生命循環を表しており、この中の一つが滞っただけでも水は流れなくなり、環境は壊れてしまうのです。このように「七景」を守ることは日本の美を守ることであり、水の流れに支えられた循環する自然環境を守ることでもあるのです。そこで、「景色いけ」を通して、日常の中で自然を生態系として体系的に捉える意識と、その大切さ、慈しむ心、つまりいけるということは心を育てるということを、多くの人々の心に深く刻み込み、自然の大切さとそれを後世に残す必要性を訴えるべく、「守り伝えたい原風景 取り戻したい心象風景」を伝えていくプロジェクトを立ち上げました。

 

イーデス・ハンソンさんの講話

イーデスハンソンさんイーデス・ハンソンさんは、現在和歌山県田辺市中辺路に在住されている。自然の中での生活体験談を話された。
特に生活に必要な水を確保する話には感動しました。中辺路に住むイーデス・ハンソン家には一般に私たちが使っている水道水がありません。湧き水の場所から自宅まで導水する必要があるのだそうです。当然導水する施設工事が必要になりますが、その前に湧き水箇所、導水するに水道パイプを施設する箇所などの地権者の承諾がいります。
また施設した後の管理がいります。使っているうちに、土砂やなんやで水道パイプが詰まることがあるからです。イーデス・ハンソンさんはこれらの苦労話を楽しく話されました。関西弁が混じっているので、大阪出身の私には楽しく拝聴できました。


目次へもどる